フルリモートで働くようになって、意外と時間がかかったのがツールに慣れることでした。
プログラミングの話ではありません。Google Workspaceです。個々の操作はなんとなくできるのに、全体の構造がつかめない。しばらく苦手意識がありました。
今は普通に使っています。転機になったのは、AIに「たとえで説明して」と頼んだことでした。
この記事では、そのときの理解の仕方と、実際に毎日使っているものだけを書きます。
フルリモートの仕事は、ツールの上で回っている
出社しない働き方では、人とのやり取りがすべてツールの上で起きます。ファイルを渡すのも、予定を合わせるのも、質問するのも、画面の中だけで完結します。
会社によって違いはありますが、Google Workspaceとチャットツール(Slack、Google Chat、Discordなど)の組み合わせで動いているところは多いです。私の会社でも、ディレクターは一日中この2つを触っています。
ここでつまずくと、地味に消耗します。ファイルの場所が分からない、共有の設定が分からない、そのたびに手が止まる。本来やるべき仕事の前で止まってしまうんですよね。
逆に言えば、ツールに迷わなくなるだけで、心の余裕がかなり変わります。事務職向けの講座でWordやExcelと一緒にGoogle Workspaceを教えているところがあるのも、そういう需要があるからだと思います。
在宅で働く環境そのものについては、別の記事に書きました。フルリモートの作業環境は、お金をかけずに少しずつ快適にできる
最初につまずいたのは「Googleドライブって何?」だった
正直に書くと、私が最初に分からなかったのはこのレベルです。
Googleドライブって何なんだろう。なんでドキュメントやスプレッドシートが、その中に入っているんだろう。GmailとカレンダーとドライブとMeet、全部Googleなのに、どういう関係なんだろう。
操作の手順は調べれば出てきます。「共有する方法」「フォルダの作り方」。そのとおりにやれば動きます。でも、全体の見取り図がないまま個別の操作だけ覚えていくと、いつまでも不安が消えません。少しでも違う画面が出た瞬間に、また分からなくなるからです。
私が知りたかったのは操作方法ではなくて、そもそもこれは何がどうなっている仕組みなのか、ということでした。
敷地と倉庫でイメージすると、一気に分かった
AIに「初心者に分かるように、たとえで説明して」と頼んだときに出てきたのが、この形でした。これで一気に腑に落ちました。
Googleアカウント=自分の敷地
まず、自分の敷地があります。これがGoogleアカウントです。すべてはこの敷地の中に建っています。
Googleドライブ=敷地の中にある倉庫
敷地の中に、大きな倉庫が建っています。これがGoogleドライブです。仕事の書類は基本的にここにしまいます。
ドキュメント・スプレッドシート・スライド=倉庫にしまう書類の種類
倉庫の中には、いろいろな種類の書類が入っています。文章ならドキュメント、表ならスプレッドシート、資料ならスライド。書類の形が違うだけで、置いてある場所は同じ倉庫です。
「なんでドキュメントがドライブの中にあるのか」という私の疑問は、ここで解けました。倉庫の中に書類があるのは、当たり前だったんです。
Gmail=敷地の入り口にある郵便受け
ここが大事なところで、Gmailは倉庫の中にはありません。敷地の入り口に立っている、別の郵便受けです。外から来たものを受け取る場所なので、倉庫とは役割が違います。
Googleカレンダー=壁に貼ってある予定表
これも倉庫の中ではなく、敷地に貼ってあるものです。
共有ドライブ=会社の敷地にある共同倉庫
自分の敷地の隣に、会社の敷地があります。そこにも倉庫があって、そちらは複数の人が出入りします。会社の書類はこちらに置きます。
共有設定=誰にどの鍵を渡すか
自分の倉庫にある書類を、相手にも見せたいときがあります。そのときにやっているのは、鍵を渡す作業です。見るだけの鍵、書き込める鍵、といった具合に種類があります。
この形で全体が見えたあと、個別の操作を覚えるのがかなり楽になりました。順番が逆だったんですね。
手順を書いた記事はいくらでもあります。でも、全体の構造をやさしく言い換えたものは意外と見つかりません。書ける人にとっては当たり前すぎて、説明する対象にならないからだと思います。
苦手意識は、操作を覚えられないことから来るのではなく、何が起きているか分からないまま操作していることから来るのかもしれません。少なくとも私の場合はそうでした。
容量は、敷地全体で分け合っている
もうひとつ、最初に分かっていなかったことがあります。
Gmail、Googleドライブ、Googleフォトは、同じ容量を分け合っています。無料のGoogleアカウントなら15GBです。
つまり、メールを溜め込むと、その分ドライブに置ける量が減ります。写真をたくさん保存しても同じです。別々のサービスに見えるのに、床面積は共通なんです。敷地の広さが決まっていて、倉庫と郵便受けと写真置き場でそれを分け合っている、と考えると分かりやすいと思います。
もうひとつ知っておくといいのが、2021年6月1日からの変更です。この日以降に作成・編集したドキュメント、スプレッドシート、スライドなどは、容量にカウントされるようになりました。それ以前に作ったファイルはカウントされません。以前は「Googleのファイルは容量を使わない」という認識が広まっていたので、ここは今も勘違いされやすいところです。
出典:Google アカウント ヘルプ「Google ストレージの仕組み」
実際に毎日使うのは、これだけ
Google Workspaceのサービス一覧を見ると、数十個並んでいます。最初に見ると、これを全部覚えるのかと思って気が遠くなります。
でも、実務で毎日触るのはこのあたりです。
Gmail — 社外とのやり取り
Googleカレンダー — 予定と会議の調整
Googleドライブ — ファイルの保管場所。共有ドライブも含めて
Googleドキュメント — 議事録、仕様の共有、原稿
Googleスプレッドシート — 一覧管理、進捗、集計
Google Meet — 打ち合わせ
Google Chat(またはSlackやDiscord) — 日常のやり取り
月に何度か使うのが、Googleスライド、Googleフォーム、ToDoリストかKeepくらいです。
触れておくと差がつくのが、GeminiとNotebookLMです。ドキュメントやスプレッドシートの中でAIが使えるようになっているので、慣れておくと作業の速さが変わってきます。
覚えなくていいものの方が、実は多い
一覧を見て怖くなる必要はありません。並んでいるものの多くは、そもそも使う人が違います。
管理コンソール、Vault、データ損失防止、エンドポイント管理、Secure LDAP。このあたりは情報システムの担当者が触るもので、転職して入る側の人が使うことはまずありません。
Google Apps ScriptやAppSheetも、最初は要りません。自動化やアプリ開発の道具なので、必要になったときに覚えれば間に合います。
使うものと、使わないものを分けられること自体が、慣れているということだと思います。
私も最初は、全部を理解しなければいけないような気がしていました。実際に働いてみると、毎日触るのは7つほどでした。
ツールの土台は、職種を変えても持ち運べる
最後に、少し先の話をします。
Google Workspaceとチャットツールに慣れているということは、フルリモートで働くための土台ができているということでもあります。そしてこの土台は、職種が変わっても持ち運べます。
たとえば、コーダーやプログラマーを目指してみたけれど自分には向かなかった、という人がいたとします。それでもフルリモートで働きたいなら、簿記を取って会計や経理の方向に進むという道があります。
私自身、一時期フルリモートの経理の求人を探していたことがあります。日商簿記3級を持っていたので、それで応募できるところを見ていました。実際に探してみて感じたのは、フルリモートの募集はWeb系と経理に集中しているということでした。2級があれば、選べる求人はもっと増えたと思います。
最近は事務や会計の仕事でもクラウドのツールを使うのが前提になっているので、ツールに強いことがそのまま評価されます。
逆もあります。今フルリモートで会計や事務の仕事をしていて、ツールは一通り使える。その人がWebを学んでIT系に移るのは、ゼロからの転職とはまったく違います。ツールの操作でつまずかない分、新しい業務を覚えることに集中できるからです。
ディレクターを目指す人にとっては、もっと直接的です。冒頭に書いたとおり、ディレクターの仕事はこのツールの上に乗っています。人の予定を押さえて、資料を配り、進行を管理して、あちこちに確認を取る。ツールが苦手なままでは、仕事そのものが成立しません。裏を返せば、ここができていることは、必須条件をひとつ満たしているということでもあります。
それと、土台はツールだけではありません。リモートで一番難しいのは、その場で聞けないやり取りだと思います。相手の手が空いているか分からない状態で、テキストだけで過不足なく伝える。相手の書いた指示の意図を読み違えない。これは慣れるまで時間がかかりますし、逆に慣れてしまえば、職種が変わってもそのまま持っていけます。
Google Workspaceの話からだいぶ離れてしまいましたが、言いたかったのは、今やっている学習が仮に思ったとおりにならなかったとしても、そこで身についた土台は残る、ということです。ツールの操作も、テキストで伝える力も、職種と一緒に消えたりはしません。Webでも経理でも、結局はこのツールの上で働くことになります。
40代の転職とお金の話については、こちらに書きました。40代がIT転職に踏み出せない理由|貯蓄より借金が多い世代の家計を調べてみた
私自身、この土台があることの意味に気づいたのは、実際に働き始めてからでした。学んでいる最中は、ツールなんて後回しでいいと思っていたんです。